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なにか趣きの違った長編でも読もうかと思ったのですが、再びタブッキ作品を読むことに。 

「とるにたらないちいさないきちがい」はインド夜想曲に続く11の短編集です。

 

印象に残っているのは、ひとりの女を愛した男達の小さな行き違いが積み重なり、

何ともうつくしい結末へと展開されてゆく表題作。
子供たちの世界をオカルト風に描いた「魔法」や「島」の青い海に浮かぶ鮮やかなオレンジ色。

劇的で退廃的なストーリーの中にも、タブッキ特有の情緒に満ちた静けさがあり、

心地よい余韻を感じさせる所もこの作家の魅力なのかなと思う。

 

持ち歩くのにかさばらない文庫が好きですが、

この表題とホックニーの装画の組み合わせがあまりに素敵で

鞄に入れるのも苦にならないほどでした。